ES研とは

「「教会と社会」研究会-中近世のヨーロッパ-」
(“Ecclesia et Societas” workshop, 略称ES研)について

 私たちは2005年7月9日に発足したヨーロッパ中近世史の研究会です。1~2ヶ月に一度集まり、研究発表と討議を重ねています。若手研究者を中心に、毎回20数名の参加者があります。

 この会の趣旨は、第一に、ヨーロッパ中近世の「教会」にかかわる諸問題に関心をもつ若手研究者の交流の場をつくることです。我が国のヨーロッパ中近世史研究では、社会経済史や国制史といった分野をみれば研究者間の交流が活発に行われていますが、それに比べて「教会」にかかわる分野では、研究者が共同で討議できる場がほとんど存在しませんでした。そうした状況の背景には、これまでの教会史研究がややもすれば教義や理念の問題に傾いていたため、研究者間の客観的な議論が成り立ちにくかったという事情があるのかもしれません。
 しかし昨今の欧米でのヨーロッパ中近世史研究をみると、「教会」と深くかかわるテーマ-たとえば都市民の遺言/兄弟団/民衆への説教/巡礼など-が、活発な研究の対象となっていて、また我が国でも多くの研究者がこれらのテーマについてすぐれた業績をあげています。つまり欧米でも我が国でも、宗教的な視点からヨーロッパ中近世社会の特徴を解き明かそうとする研究が、現在の重要な潮流となっているのです。そして、こうした研究の視角はキリスト教会の問題を超えて、キリスト教徒/ユダヤ教徒/イスラム教徒間の対立・共存関係の実態を解明しようとする動きをも生み出しています。
 さらに先に述べたような社会史的なテーマだけでなく、社会経済史/国制史/文化史といったジャンルでこれまで扱われてきたテーマも、人々の宗教的な心性の視角から考察すれば新しい分析が可能なのではないでしょうか。この研究会が掲げる「教会と社会」というタイトルは、まさに、ヨーロッパ中近世史の全体像を宗教的な側面から再考することを意味しています。それによって中近世に生きた人々の生活がより鮮やかに再現できるのではないか、という期待が込められています。

 以上の問題意識に立って、この研究会では、中近世ヨーロッパの「教会と社会」をめぐる諸問題(教会と政治/都市と教会/民衆宗教運動/キリスト教と異教など)を議論の中心にすえながらも、また広い意味で「教会」とかかわる諸問題(王権/国家/文字文化/図像など)も考察の視野に入れて、研究発表と討議を行っていきたいと考えています。

甚野尚志 2006.5.28.